KREVA、自身のフェスでサプライズ連発
今年、ソロデビュー10周年を迎えたKREVAが、9月07日と9月08日の2日間にわたり日本武道館にて「908 FESTIVAL 2014」東京公演を開催し、18000人を熱狂の渦に巻き込んだ。 初日となる7日は「KREVA~完全1人武道館~」と題し、文字通りKREVAがたった1人でステージ上のさまざまな機材をすべてコント ロールしながら演奏しラップするというもの。2007年11月、KREVAは同内容のライブを同じく日本武道館を舞台に初挑戦し、それを目撃 したオーディエンスやアーティストから「ヒップホップ史、音楽史に刻まれるべき伝説」とまで絶賛された。このライブを遂行するために、リハーサルから本番に至るまでKREVAにかかる負担は想像を絶するものがある。メモリアルイヤーゆえに例年以上に精力的かつ派手な活動展開を見せているKREVAが、もう一度「完全1人武道館」の開催を決断したこと自体が驚きでもあったが、やはりこの男は、まだ誰も足を踏み入れていな い道なき道に踏み入り、自らの音楽で新たな地平を切り拓こうとするのだ。 2日目、「クレバの日」にあたる8日はKREVAがホスト役となり、ブラックミュージックに多大な影響を受け、その本質的なグルーヴやポ ピュラリティを独自の方法論で昇華し、体現している豪華アーティストたちをゲストに招く。まさに「908 FESTIVAL」だからこそ実現できる音楽の祭りだ。KREVAのもとに集結するのは鈴木雅之、久保田利伸、三浦大知、AKLO、KICK THE CAN CREW、RHYMESTERの6組。KREVAとゲスト陣はどのように躍動し、またどのように交わりながら刺激的なパフォーマンスを繰り広げるのか ――。初日も2日目もすべての瞬間が見逃せないライブになることは、開催前から明らかだった。ここでは駆け足ながら、2日間の速報レポートを お届けする。 初日。会場入りしたオーディエンスを待ち構えていたのはDJ 908だ。そう、2007年同様、開演前からKREVAの「完全1人武道館」は始まった。DJ 908は関係性の深いアーティストの曲や自身が手がけたリミックス曲をなどをかけ、さらには日本のヒットソング群の歌詞にある“くれば”部分をピックアッ プしループさせるなど、遊び心に満ちたプレイで会場を盛り上げた。 開演時刻を10分ほど過ぎたころ場内が暗転。スクリーンに映し出されたのは、KREVAの10年間を振り返る映像だ。次に、この日を迎える までのリハーサルに始まり、当日の武道館入りからステージに向かうKREVAをドラマティックに捉えた映像が流れる。そして、割れんばかりの 大歓声に迎えられ、KREVAは自らを鼓舞するように胸を叩きながらステージをゆっくり歩き、複数の機材に取り囲まれた立ち位置につく。 KREVAはそのままビートプレイ及びシーケンスの役割を担う機材・pushと、ワイヤレスのDJコントローラー・ORBITを駆使して「基準」のイントロを奏でると、ヘッドセットマイクから問答無用のスキルでラップを放っていく。続く「ストロングスタイル」でもラップをしながら 中央に配置されたターンテーブルとミキサーに触れ、万能の音楽制作ツール・MACHINEのパッドをサンプラーの要領で叩いて効果音を出す。 すごい。2007年から格段に進化した機材を掌握するKREVAのおおいなる進化。それをいきなり示した格好だ。 ここから、ブロックごとに コーナーを設け、「完全1人武道館」ならではのエンターテイメント性を打ち出していく。転換時に流れるインタールードもまたKREVAが制作 したインスト曲だ。「いきなりクライマックス。これから<25分メドレー>をやります。しかも、ラップしながら、スクラッチしながら、歌いながら次の曲を準備し て、きれいにミックスしてつないでいきたいと思います」という宣言から「成功」に始まり、「成功」で終わる全8曲のメドレーを完璧にやり遂げ た25分間。1人コントの要領でコミカルに仕立て上げた〈ライミング予備校〉では、オープニングから会場に満ちていた緊張感を絶妙に緩和し、新曲『47 都道府県ラップ』も初披露した。 MACHINEを使用して〈ビートメイク〉を実践し、そのビート上で「トランキライザー」を鳴らせば、『くればいいのに』と『BESHI』 のマッシュアップに続き、さらに『全速力』と『Space Dancer』も有機的に融合させる歌唱をみせた。セミアコースティックにおける『瞬間speechless』は、その場でボイスパーカッション、カホン、タンバリンを鳴らして組んだリズムをループマシーンに通し、そこにウインドチャイムやトイピアノなどの生音を重ねた。ファンにはなじみ 深いシンセサイザー・OASYSで弾き(押し)語りした『EGAO』で会場は静かに胸を打たれた。そこから一転、クライマックスに向けて 開放的に走り出す<外出>ブロックで、KREVAはORBITを腰に巻きステージ前方へ。「絶対に武道館でやりたかった」という『Na Na Na』で武道館全体がダイナミックな多幸感に包まれた。 ラストナンバーはソロデビュー曲である『音色』。この日使用したすべての機材とその機能をあらためて紹介しながら鳴らされた『音色』は、あまりに感動的な響きを宿していた。いつまでも鳴り止まない大きな拍手を背中で受け止めながら、KREVAはステージを去った。こうして、“伝説はひとつじゃない”ことを威風堂々と証明してみせた2014年版の「完全1人武道館」は幕を閉じた。 2日目。開演時刻が迫ると同時に、オーディエンスの高揚感は異様なまでに膨れ上がっていった。サウンド面のホストを務める半生バンドの 演奏をバックにKREVAが登場。そして、「トランキライザー」が始まった瞬間にステージと客席の熱量は早くもピークに達した。間髪入れずに 『全速力feat.三浦大知』へ移行し、いきなり果たされた盟友の共演に悲鳴にも似た歓声が上がる。以降、数珠つなぎのようにゲストアー ティストが登場する展開へ。KREVAからバトンが渡されると、三浦大知は華麗で力強いダンスとボーカリゼイションでオーディエンスを魅了した。 続いて登場したAKLOは、オーディエンスをアジテートしながらすごみと色気をたたえたラップを聴かせる。『Catch Me If You Can feat.KREVA』で再びKREVAが登場。ダークかつスリリングなサウンドで2人は日本最高峰のラップスキルを見せつけた。 ステージに残ったKREVAが『くればいいのに』のラップパートをしっとりした趣で紡ぐと、曲間で「この曲をいままでいろんな人に歌ってもらいました。でも、俺はどうしてもこの歌声が聴きたかったんだよ」と鈴木雅之を呼び込む。予想外のサプライズ演出にオーディエンスは歓喜。鈴木は名曲『夢で逢えたら』で武道館の大合唱を生むと、最後に「ラブソングの王様」と「ラップの大魔王」が合体を果たす『僕らの奇跡 feat.KREVA』を披露。「事前に出演がアナウンスされてないアーティストが出てきてもいいだろ!?」と、次にKREVAがステージに招いたのは MCU&LITTLE=UL。ここからは半生バンドのメンバーが熊井吾郎を残してステージを去り、DJスタイルのライブが始まった。UL の1曲目はKREVAプロデュースによる『La La La Like a Love Song』。ラストのサビでULとおそろいの全身白の衣装、つまりKICK THE CAN CREW仕様に着替えたKREVAが登場。そこからKIKC THE CAN CREWのサマーアンセム『イツナロウバ』につなげられたのだから、たまらない。さらに、『神輿ロッカーズ』ではRHYMESTERがステージに現れ、武道館はまさにお祭り状態に。『マルシェ』からDJ JINも参加し、RHYMESTERとKICK THE CAN CREW=6本のマイクリレー&デュエットが実現した。ステージに残ったRHYMESTERはいつも通りのKING OF STAGEスタイルで『ONCE AGAIN』と『CHOICE IS YOURS』をプレイ。多面的な視点に裏打ちされたリアリズムに富んだメッセージを掲げた。 宇多丸が最大級のリスペクトを込めて紹介した次なるアーティストは、久保田利伸。久保田と再登場した半生バンドが1曲目に奏でたのは 『M☆A☆G☆I☆C 久保田利伸 meets KREVA』。久しぶりの共演にもかかわらず盤石のコンビネーションを見せる両雄のパフォーマンスにオーディエンスは酔いしれた。「今からニューヨークに 帰らなきゃいけない」と帰ろうとする久保田利伸を引き止めるKREVA。そのやり取りをよそに、あの大名曲のイントロが流れる。すると、 ステージにはなんと三浦大知が。三浦大知が気持ちよさそうに『La La La Love Song』を歌い出すと、久保田利伸とKREVAはいつの間にかステージ上手に用意されていたベンチに座り、「やるな大知!」と絶賛する。そして、曲は2 番に突入し、久保田利伸もステージ中央に戻り、三浦大知とのツインボーカルによる『La La La Love Song」を実現させた。 数々のサプライズ演出と夢の共演を経て、「908 FESTIVAL 2014」の大トリを飾るのは、もちろんKREVAだ。『イッサイガッサイ』を皮切りにスタートしたKREVAのライブは『蜃気楼 feat.三浦大知』や『中盤戦 feat.Mummy-D」』いうコラボレーション曲も惜しみなく披露。『Na Na Na』は前日の「完全1人武道館」と同じくオーディエンスのコール&レスポンスとともに高らかに歌われた。ラストはソロの原点曲『希望の炎』からソロデ ビュー曲『音色』へ。KREVAが『音色』を歌い終わると同時に会場全体から起こった彼の10年を祝福し称賛する大きな拍手は、やがてアン コールを求めるそれに変わった。「日本で、世界で、今日はここがいちばんパーティしてると思うんだよ。それを証明しよう。みんなと一緒だったらなんでもできそうな気がするよ」 アンコールに選ばれたのは、半生バンドの強靭なグルーヴ感が際立つ『パーティはIZUKO?』。そう、2014年、10周年の9月08 日=クレバの日は日本武道館を世界中で最高のパーティ空間にする日でもあった。出演者全員がステージに揃い華々しいエンディングを迎える と、さらにエンディング映像ではこのような告知が。「2015 まだまだ続く10周年の挑戦!! ニューシングルリリース決定! ニューアルバムリリース決定! 全国47都道府県+αツアー決定!!」KREVAの10周年は、まだまだ続く。そこで私たちが耳にし目撃するのは“孤高のヒップホップアーティスト”と呼ばれる男だけが体現し得る、最高を更新する音楽と生き様である。文:三宅正一(ONBU) KREVA楽曲はこちら!